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回想~東日本大震災(2)

私が災害派遣医療チームとして、派遣された場所は石巻でした。

石巻は市の大半が津波で流され、2000人以上がお亡くなりになられました。

私が石巻に行ったのは震災から少し時間が経ち、多くの人が体育館などで避難所生活をしながら家の片づけに通ったり、戻らない家族を探しに行ったりし始めた頃でした。

街はいたるところに家具や濡れた畳や、何だかわからない粗大ごみが散乱していました。

津波で運ばれた泥が乾き、風が吹くと砂ぼこりが舞い上がり、皆がのどの痛みや咳、目の痛みを訴えていました。

私は、長野から一緒に行った看護師さんと共に担当の避難所を訪ねて具合の悪い方の診察をして回っていました。

その中で、70過ぎの男性に『お困りのことないですか?』と声をかけた時、その男性から現況を聞くことになりました。

その方は海辺のほうで奥様と二人暮らしでしたが、津波が来たときご自分は家に居ず助かったそうです。

しかし、奥様はお家におられ津波に巻き込まれ、行方不明に。。。

男性は幾日も奥様を探して回られたそうです。

そしてついに泥に埋もれた奥様を探し当てられたとのこと。

その男性は最後にひとりごとのように次の言葉をおっしゃり立ち去られてしまいました。

『こんなでっかい地震だったのに、津波が来るのわかってたはずなのに、なんで逃げなかったのか、、、あいつはバカだ。。。』 

私は、何も声をかけることができませんでした。

自然の恐ろしさや運命と片付けられない 言葉に言い表せないものを強く感じました。

                          続く。。。


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